【書評】博士の愛した数式

今回は『博士の愛した数式』 著 小川洋子

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第一回本屋大賞受賞作で発売後すぐ我が家に来た本を小学生?だった私は最後まで読めず放置していた経緯があります。

どれほど読書が苦手だったのでしょうか。笑

 

今回は16年の時を経て、読み直すことに。

 

皆さんご存じかと思いますが、毎度のごとくさらっと内容も。

 

老年の天才数学者(博士)と、家政婦の若い女性(私)、そしてその息子(ルート君)の3人が主な登場人物。

 

家政婦の「私」が新たに契約することになったのが、「博士」の家。

この契約先が問題ありといわれた理由は、

博士が過去に交通事故に遭って以来、記憶を80分しか保持できない障害を抱えていること。

この第一の設定にまず惹かれてしまいました。

かつて私の大好きな新垣結衣主演の「掟上今日子の備忘録」では毎日寝ると記憶リセットしてしまう設定でしたが、掟上今日子は必要な事項は直接体に書き込んでいました。

 

この博士の場合、大切なことは付箋に書き、クリップでスーツに留めるというもの。

「私」や「ルート君」の存在は毎回付箋を見ることで、再確認します。

 

 

博士が自分の障害のために周囲に迷惑をかけないように配慮する一方、

親子の二人も博士の配慮を最小限にすべく、何度同じ話をされても気にしないなど、何でもない風に振舞っていきます。

 

そうした三人の会話の軸になっているのが博士お得意の『数学』なのです。

 

この物語の面白かった点は

博士と親子の会話や関係を『数学』によって見事につなぎ合わせていく、

というか、なんでもない事柄を、数字における関係性で美しく重要なものに感じさせてしまうことでした。

 

つまりはというと、

「私」が初めて「博士」に挨拶に行くと開口一番、「私」に誕生日を聞く場面があります。

ここで 2月20日、と答えます。

すると博士がかつて大学にて受賞した名誉ある学長賞No.284の数字を用いて、

 

「220と284が友愛数であり、


それはフェルマーデカルトも1組ずつしか見つけられない、稀な組み合わせであることを説明し、


私と博士の関係性が奇跡にも近い重要なもののように扱うのです。

友愛数とは、一方の数の約数の総和がもう一方の数になる組み合わせのこと)

 

僕にとっては数学の話自体が興味深いもので、

高校卒業程度でありますが、数学は大好きな科目であったのでどんどん物語を読み進めてしまうし

 

それ以上に


こうした友愛数のほか双子素数虚数完全数といった数学の整然とした美しさを登場人物の関係性にまで落とし込み、


巧みに温厚で愛情感のある関係性を描写する点がなんとも美しかった。

 


物語を通して、三人の関係が家族とも恋人とも異なった、しかし深い情愛で繋ぎ合わされていく過程を

どうして、まったく無機質な数字の世界で表現できるのかと終始感動してしまう。

 

博士の教えてくれる、数字のもつ学問的な美しさにも加えて、


数字の美しい関係性を日常生活の中にリンクさせて物語を紡ぎだしていく創造力

最後には物語のすべてのピースが一つに合わさっていく芸当を目の当たりにして

 

著者、小川洋子さんにあっぱれの一言しか持ちえない作品でした。

 

この本は小学生の頃に読み終えていたらどんな感想を持っただろうか気になるが、


もしかしたら、数学者を目指していたかもしれないと思うほど、改めて数学の面白さに

も気づかせてくれた。

 

 

 

この物語は「数学」という一見すると難解そうなカテゴリでまとめ上げられ、

しかし読んでみると小学生でも理解できるほどやさしい『算数』で

三人の暖かく優しい内面、関係性を表現していく美しい文学作品でした。

 

 

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・雑談・

昨晩は医局zoom飲み会が開催され、研修医のわたくしまで招いていただき、楽しませていただきました。

 

あまりの楽しさと久方ぶりの飲み会だったもので

ビールにハイボールに八海山4合瓶まで開けてしまいましたm(__)m

 

お恥ずかしながら今しがた「4合瓶」という言葉がすっと出てこなく検索かけてしまったのですが。笑

日本酒の単位についてへえ~と思ったので紹介。

 

1合=180ml

1升=1800ml

はよくご存じかと思いますが、、、

 

その前後の単位として、10倍、10倍・・・で

小さい方から 「勺」➡「合」➡「升」➡「斗」➡「石(ごく)」

となるそうな

 

どれも聞いたことある単位ですが、関係性がすっきり。

カルテに alcohol :Sake5勺/dayとかわざと書いてみたい。笑

 

皆さんお酒はほどほどに!(説得力皆無)